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2016.08/29 [Mon]
ゼロから始める男子校生活
前にアップしたものを少し手直ししました。これの続きが書きたいのに、難しくて苦戦しております・・・;
【ゼロから始める男子校生活】
「うえー嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁ!」
荷解き途中のダンボールが散乱する部屋の中、ベッド上のこんもりと盛り上がった布団の下で、この部屋の主である俺こと、ナツキ・スバルは嘆きの雄たけびを上げた。
よりにもよって人生初の引っ越しという難易度の高いイベントが、高校三年の五月という微妙すぎる時期なんだよ!?(父ちゃんの仕事の都合だけどさ)
しかも男子校とかありえねー!コミュ症なめんな!今すぐ前いたとこに戻りてーよ!
エミリアたん、レム、ベア子、ペトラ、フレデリカ先生、ついでにラムー!
片想い中のクラスメイトだった女の子、幼馴染みの双子の姉妹、捨て猫を通して仲良くなり妹同然の二人の少女、そして前の担任だった女教師の姿を思い浮かべて、俺はうっすらと涙を浮かべた。
ピコン!
枕元に無造作に置かれたスマホが軽快な音を鳴らす。
“片付けはもう終わりましたかスバルくん?
新しい場所はどうですか?
迷子にならないように気をつけて下さいね。”
「・・・・・・レム」
“レム達に会えなくて正直辛い。
今すぐそっちに戻りたい。
明日から、新しい学校とか嫌すぎる。
ただでさえコミュ症なのに、こんな中途半端な時期に転入とか、どう接すればいいかわかんねーよ。”
幼馴染みで長い付き合いのレムには、自分のダメなところも全部知られてしまっている為、本心を包み隠さずに届いたLINEに返信。
ピコン!
“スバルくんなら大丈夫だって、レムは信じています。
レムはスバルくんが本当は強い事を、スバルくん以上に知っていますから。
・・・スバルくんの声を聞きたいですが、会いたくなってしまうので今はレムも我慢します。
夏休みには遊びに行かせて下さいね?”
「レムッ・・・!」
脳裏に水色の髪をしたレムの、優しい笑顔が鮮明に浮かぶ。
思わず涙が溢れ出しそうになったのを、鼻をすすって誤魔化した。
「あー!レムにカッコ悪いとこばっか見せられないよな!」
・・・実のところ、向こうから引っ越した日にも、みんなに見送られ、大泣きしてしまった俺である。
布団から勢いよく飛び出した俺は、残りの荷物整理に取り掛かった。
「・・・やっと終わった・・・」
必需品だけでなく、やたらと数の多い趣味の漫画やラノベ、ゲームなどを纏めて本棚に並べ、掃除機と拭き掃除までして完璧。
やれば出来る子、俺エライ!
少しお疲れモードで机に突っ伏していた俺の頬に、プニッと当たるネコパンチ。
「なんだよ、パック?」
「スバル、今からボクと周辺の探索に行ってみようよ!」
目付きが悪いとよく言われる俺のジト目にも、全く臆さない灰色の小猫のパックは、元捨て猫で、なんやかんやあって今は俺の愛猫だ。
そして不思議な事に、俺にはパックの言葉がわかる。
というか、俺にはパックが人の言葉(普通の日本語)で話しているようにしか聞こえないんだが、他の人からしたら「ニャー」としか聞こえないらしいのが不思議だ。
ちなみに俺に、他の猫や動物の声がわかるといった加護があるわけではない。
「そうだな・・・どうせなら新しい学校まで行ってみるか!」
慣れた様子で俺の右肩に飛びのったパックを連れて、俺は玄関の扉を開ける。
「ちょっと出掛けてくるよ!」
「―――いってらっしゃい」
お母さんに一声掛けて、扉を閉めた。
地図アプリには頼らず、ぶらぶら歩きながら新しく住む事になった街を探索する。
一応の目的地である学校までの道程は、昨日車で通ってもらったので、だいたい覚えている。
十分歩いていける距離だったハズだ。
「おっ、またコンビニ。さっきあったばっかなのにな」
やっぱり都会は便利なのかと、ちょっと感動。
「けど、車も多いな。外に行くときは気を付けろよパック」
「誰に言ってるんだい?って気もするけど、スバルのボクを心配くれる気持ちは素直に受け取っておくよ」
「そうしてくれ。と、高校が見えてきたな~やっぱでっけぇ!」
山間部にあった前の学校と比べると、度肝を抜かれるレベルだ。
まぁ、昨日も見たので驚きは薄いのだが。
とりあえず、壁伝いに校門を目指してみる。
「―――ん?なんだありゃ」
日曜日の夕方だから人はほとんどいないと思っていたのだが、校門前に人だかりができていた。
女子の集団の中心に、夕陽すらかすむ燃えるような赤髪の少年が見えた。
もしかして漫画とかでよくある、モテ男が女子をはべらせてるアレか?
イケメン爆発しろっ!なんて僻みながら、聞き耳を立てて少し様子を窺ってみる。
「ラインハルトさん、私達とこれからお茶に行きましょうよ!」
「それより、私達とカラオケへ行った方が楽しいわよラインハルトくん」
女子達が甘い声で口々に誘いを掛けている。
「申し訳ないけれど、これから約束があってね。急いでいるんだ」
「少しだけでいいから」
「そうよ、お願い!」
困った表情を浮かべて謝るイケメンに、なおも執拗に迫る女子達。
「モテるオスの辛いところだね~」
パックが肩をすくめながら、そんな感想を述べた。
さっきは羨ましいと思ったけど、イケメンも大変なんだな~なんて、ちょっとだけ同情する。
・・・・・・しょうがねーな、ここは。
「おい、約束してんのに遅いから迎えにきてやったぞラインハルト!悪いけど、俺のが先約なんで、コイツは借りてくぜ!」
「え?」
女子の間を抜けてイケメンの手を掴んだ俺は、唖然とする女子達の中から素早くイケメンを連れ出した。
近くで見たソイツは、瞳が晴れた空の色をしていて、ただのイケメンではなく、超絶イケメンだった。
「えっと、君は?・・・なぜ僕を?」
角を曲がって女子達から見えない位置まで離れてから、掴んでいた手を放した。
「フッ、俺の名前はナツキ・スバル。噂の転校生さ!」
ビシッとポーズを決めて名乗ってみたが、青い双眸で真っ直ぐに見つめられ、正直恥ずかしくなる。
田舎と都会ではつかみが違うんだな・・・よし、明日はこの挨拶は自重しよう。
「・・・ゴホン。なんか困ってるように見えたから助け船を出したつもりだったんだけど、迷惑だったならすまんかった。
そんで、みんなが呼んでた名前で勝手に呼ばせてもらったけど・・・」
大きく咳払いした後、急に自信が無くなってきた為、小声で理由を説明。
小心者な俺に、パックが肩を震わせているが、ここはあえてスルー。
「そうだったんだね、ありがとうスバル!困っていたのは確かだから助かったよ。
それから、僕の名前はラインハルト・ヴァン・アストレア。もちろん、ラインハルトと呼んでくれて構わない。
君の転入を心より楽しみにさせてもらうよ!」
笑顔を浮かべて爽やかに告げながら、さらっと距離を縮めてきたラインハルトは、俺の手を握った。
性格もイケメンで、男に手を握られたというのに、嫌な感じは全くしない。
「ところでラインハルトは急いでたんだろ?俺ももう行くから、じゃな」
急いでいた彼を救出したのに、引き止めては意味がないと判断した俺は、くるっと踵を返して帰路につく。
「明日が楽しみだよスバル」
ラインハルトの嬉しそうな囁き声は、残念ながら俺の耳までは届かなかったが、「スバルの天然っぷりは、罪深いよね」とパックが意味深に呟いた。
【ゼロから始める男子校生活】
「うえー嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁ!」
荷解き途中のダンボールが散乱する部屋の中、ベッド上のこんもりと盛り上がった布団の下で、この部屋の主である俺こと、ナツキ・スバルは嘆きの雄たけびを上げた。
よりにもよって人生初の引っ越しという難易度の高いイベントが、高校三年の五月という微妙すぎる時期なんだよ!?(父ちゃんの仕事の都合だけどさ)
しかも男子校とかありえねー!コミュ症なめんな!今すぐ前いたとこに戻りてーよ!
エミリアたん、レム、ベア子、ペトラ、フレデリカ先生、ついでにラムー!
片想い中のクラスメイトだった女の子、幼馴染みの双子の姉妹、捨て猫を通して仲良くなり妹同然の二人の少女、そして前の担任だった女教師の姿を思い浮かべて、俺はうっすらと涙を浮かべた。
ピコン!
枕元に無造作に置かれたスマホが軽快な音を鳴らす。
“片付けはもう終わりましたかスバルくん?
新しい場所はどうですか?
迷子にならないように気をつけて下さいね。”
「・・・・・・レム」
“レム達に会えなくて正直辛い。
今すぐそっちに戻りたい。
明日から、新しい学校とか嫌すぎる。
ただでさえコミュ症なのに、こんな中途半端な時期に転入とか、どう接すればいいかわかんねーよ。”
幼馴染みで長い付き合いのレムには、自分のダメなところも全部知られてしまっている為、本心を包み隠さずに届いたLINEに返信。
ピコン!
“スバルくんなら大丈夫だって、レムは信じています。
レムはスバルくんが本当は強い事を、スバルくん以上に知っていますから。
・・・スバルくんの声を聞きたいですが、会いたくなってしまうので今はレムも我慢します。
夏休みには遊びに行かせて下さいね?”
「レムッ・・・!」
脳裏に水色の髪をしたレムの、優しい笑顔が鮮明に浮かぶ。
思わず涙が溢れ出しそうになったのを、鼻をすすって誤魔化した。
「あー!レムにカッコ悪いとこばっか見せられないよな!」
・・・実のところ、向こうから引っ越した日にも、みんなに見送られ、大泣きしてしまった俺である。
布団から勢いよく飛び出した俺は、残りの荷物整理に取り掛かった。
「・・・やっと終わった・・・」
必需品だけでなく、やたらと数の多い趣味の漫画やラノベ、ゲームなどを纏めて本棚に並べ、掃除機と拭き掃除までして完璧。
やれば出来る子、俺エライ!
少しお疲れモードで机に突っ伏していた俺の頬に、プニッと当たるネコパンチ。
「なんだよ、パック?」
「スバル、今からボクと周辺の探索に行ってみようよ!」
目付きが悪いとよく言われる俺のジト目にも、全く臆さない灰色の小猫のパックは、元捨て猫で、なんやかんやあって今は俺の愛猫だ。
そして不思議な事に、俺にはパックの言葉がわかる。
というか、俺にはパックが人の言葉(普通の日本語)で話しているようにしか聞こえないんだが、他の人からしたら「ニャー」としか聞こえないらしいのが不思議だ。
ちなみに俺に、他の猫や動物の声がわかるといった加護があるわけではない。
「そうだな・・・どうせなら新しい学校まで行ってみるか!」
慣れた様子で俺の右肩に飛びのったパックを連れて、俺は玄関の扉を開ける。
「ちょっと出掛けてくるよ!」
「―――いってらっしゃい」
お母さんに一声掛けて、扉を閉めた。
地図アプリには頼らず、ぶらぶら歩きながら新しく住む事になった街を探索する。
一応の目的地である学校までの道程は、昨日車で通ってもらったので、だいたい覚えている。
十分歩いていける距離だったハズだ。
「おっ、またコンビニ。さっきあったばっかなのにな」
やっぱり都会は便利なのかと、ちょっと感動。
「けど、車も多いな。外に行くときは気を付けろよパック」
「誰に言ってるんだい?って気もするけど、スバルのボクを心配くれる気持ちは素直に受け取っておくよ」
「そうしてくれ。と、高校が見えてきたな~やっぱでっけぇ!」
山間部にあった前の学校と比べると、度肝を抜かれるレベルだ。
まぁ、昨日も見たので驚きは薄いのだが。
とりあえず、壁伝いに校門を目指してみる。
「―――ん?なんだありゃ」
日曜日の夕方だから人はほとんどいないと思っていたのだが、校門前に人だかりができていた。
女子の集団の中心に、夕陽すらかすむ燃えるような赤髪の少年が見えた。
もしかして漫画とかでよくある、モテ男が女子をはべらせてるアレか?
イケメン爆発しろっ!なんて僻みながら、聞き耳を立てて少し様子を窺ってみる。
「ラインハルトさん、私達とこれからお茶に行きましょうよ!」
「それより、私達とカラオケへ行った方が楽しいわよラインハルトくん」
女子達が甘い声で口々に誘いを掛けている。
「申し訳ないけれど、これから約束があってね。急いでいるんだ」
「少しだけでいいから」
「そうよ、お願い!」
困った表情を浮かべて謝るイケメンに、なおも執拗に迫る女子達。
「モテるオスの辛いところだね~」
パックが肩をすくめながら、そんな感想を述べた。
さっきは羨ましいと思ったけど、イケメンも大変なんだな~なんて、ちょっとだけ同情する。
・・・・・・しょうがねーな、ここは。
「おい、約束してんのに遅いから迎えにきてやったぞラインハルト!悪いけど、俺のが先約なんで、コイツは借りてくぜ!」
「え?」
女子の間を抜けてイケメンの手を掴んだ俺は、唖然とする女子達の中から素早くイケメンを連れ出した。
近くで見たソイツは、瞳が晴れた空の色をしていて、ただのイケメンではなく、超絶イケメンだった。
「えっと、君は?・・・なぜ僕を?」
角を曲がって女子達から見えない位置まで離れてから、掴んでいた手を放した。
「フッ、俺の名前はナツキ・スバル。噂の転校生さ!」
ビシッとポーズを決めて名乗ってみたが、青い双眸で真っ直ぐに見つめられ、正直恥ずかしくなる。
田舎と都会ではつかみが違うんだな・・・よし、明日はこの挨拶は自重しよう。
「・・・ゴホン。なんか困ってるように見えたから助け船を出したつもりだったんだけど、迷惑だったならすまんかった。
そんで、みんなが呼んでた名前で勝手に呼ばせてもらったけど・・・」
大きく咳払いした後、急に自信が無くなってきた為、小声で理由を説明。
小心者な俺に、パックが肩を震わせているが、ここはあえてスルー。
「そうだったんだね、ありがとうスバル!困っていたのは確かだから助かったよ。
それから、僕の名前はラインハルト・ヴァン・アストレア。もちろん、ラインハルトと呼んでくれて構わない。
君の転入を心より楽しみにさせてもらうよ!」
笑顔を浮かべて爽やかに告げながら、さらっと距離を縮めてきたラインハルトは、俺の手を握った。
性格もイケメンで、男に手を握られたというのに、嫌な感じは全くしない。
「ところでラインハルトは急いでたんだろ?俺ももう行くから、じゃな」
急いでいた彼を救出したのに、引き止めては意味がないと判断した俺は、くるっと踵を返して帰路につく。
「明日が楽しみだよスバル」
ラインハルトの嬉しそうな囁き声は、残念ながら俺の耳までは届かなかったが、「スバルの天然っぷりは、罪深いよね」とパックが意味深に呟いた。
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